コンテンツへスキップ

数と手間の力

革のメーカーで血筋やトラを確認して、どこまでどう入れるかということを確認するのだが、特にヌメ革は銀ペンが消えにくく、歩留まりが悪くなっては本末転倒。という訳で、裁断職人と革メーカーで合流して打ち合わせることがある。そして、印無しで裁断を任せる。裁断職人は今度は徒歩で縫製の職人へ持っていくのだが、縫製の職人へは裁断前に話してあるので、まだかまだかと待っている。優秀な職人は段取りがしっかりしていて、実際の作業はとても早い。そうでなければ仕事にならないからだ。

段取りというのは1個でも100個でも同じだけ手間がかかる事が多い。だからこそ数の力が必要になる事がある。数や時間の力が重なれば、それが仕事として成り立ち、キャリアとなってまた腕が上がる。取り扱う品物によって、どう折り合いをつけていくかに違いはあるが、パパッと簡単にできるものなどそうそうなくて、積み重ねでしか越えられない壁がある。そんな基本的なことですら、いつの間にかどこかへ飛んでしまってハッとすることがある。

沢山作ったとしても、お客様にとってはたった一個の品物と出会いがあるのだから、その出会いを大切にするためにも数の力でより良いものにしていきたいものです。